今年は例年に無く雨の多い8月だった。その影響もあってか普段あまり目にしないムシが多いような気がします。
場所は渓流にかかる橋の上。周りはスギがそびえ立ち薄暗く、じっとりと湿度も高い。この橋の欄干の上は苔や地衣類が生え、いつ行っても何かしらのムシに遭遇する。今回、撮影した日は特に湿度が高く橋全体が濡れていた。
そんな欄干の上をムシの糞のような小さな物体が点々としていた..
苔等を食べるムシの糞だろう、最初はそう思いました
しかし、この大きさの糞を出すムシは1頭もいない。怪しい..
上とは別のもの。こちらは微妙に動いている!糞を少し持ち上げてみた
キノコバエ科 Epicypta sp.
9月10日追記:ezo-aphidさんがこの幼虫について調べてくれました。その流れを記します。
- 腹節のcreepin welt (勝手に櫛歯条線と呼称)でキノコバエ科。(5枚目の写真)
- MNDのlarvaの項に「Epicyptaのある種幼虫が糞などを背負う」との記述
- Phronia, Trichonta, Epicypta属の幼虫で、このような生活をする
- CiNii論文、近年の笹川さんらの報告でPhronia、Epicypta、Platurocypta,属ともに日本に産する
- 文献「Krivosheina key to genera fungus gnat larvae」330項の頭部画像よりEpicyptaに行き着く
- Epicypta、「mokuroku」では2種の記録。笹川さんが皇居から4新種を記載。
- Krivosheina(2010)によれば、このようなcaseを背負うのはPhronia、Epicypta属のみで、前者は短円錐型、後者は平楕円型のcaseである
また過去にもHepotaさん、tukikuiさん同属かわかりませんが撮影されておられます
あきらかに甲虫の幼虫ではない風貌。雰囲気はこちらに近い
黒い頭部を亀のように体内に引っ込めています。糞を外してみました↓
甲虫ではないので脚もありません。腹部の黒い筋。移動する為の構造?ブラシ状になっていました
櫛歯条線というようです
櫛歯条線というようです
撮影後、糞を元に戻しましたが.. これで勘弁してもらいましょう
乾いた場所には生息できそうにない感じですね
8月29日撮影 ゆめさき森の公園
そして5日後
気になったので再度、訪れてみました。なんと1頭も居なくなっていました。橋自体も乾燥までとはいきませんが、前回のようにじっとり濡れていません。かわりに妙なものを見つけました。上の幼虫は海外のサイトでも出て来ましたが下の物体は見つけられず。
これは糞の中で蛹化したものと推察。長さ約6mm
どのように紡いでいったのか..マンホールのような蓋
橋よりペリっと外してみると。あら!蓋だけで脱皮殻以外、中は空っぽ。
(2枚上の写真を裏からのぞいた状態となります。下側が蓋)
脱皮殻。持ちかえって丁寧に調べれば良かったのですが、その場で撮影(^^;;
画面左下に複眼が見えます。雰囲気はこちらに似ています
こちらは寄生蜂?にやられた可能性のあるもの
9月3日撮影 ゆめさき森の公園
橋よりペリっと外してみると。あら!蓋だけで脱皮殻以外、中は空っぽ。
(2枚上の写真を裏からのぞいた状態となります。下側が蓋)
脱皮殻。持ちかえって丁寧に調べれば良かったのですが、その場で撮影(^^;;
画面左下に複眼が見えます。雰囲気はこちらに似ています
9月3日撮影 ゆめさき森の公園
おー(パチパチパチ)、期待して待っていました。・・・・・・よく見つけ、よく撮ってますね。
返信削除腹節の櫛歯条線でキノコバエ科とあたりがついたところで、MNDのlarvaの項に「Epicyctaのある種幼虫が糞などを背負う」との記述を見つけました。これを手がかりにネット検索すると、Phronia属に似たような画像がありました。Phronia, Trichonta, Epicycta属の幼虫で、このような生活をするようですが、詳しいことはまだ判りません。このうち、(mokurokuで見たところ)国内ではPhronia属の2種が分布しているようです。
「 Phronia larva 」で画像検索してみて下さい。
追伸:おちゃたてさんのところには、Epicycta成虫が写ってましたね。国内分布については調査不充分です。
返信削除スペルミスです、Epicycta>> Epicyptaでした。
返信削除CiNii論文を探すと、近年の笹川さんの報告で、Phronia, Trichonta, Epicycta の3属ともに日本に産することが判りました。あちこち探しまわって、結局ロシア語の文献に行きあたり、もっぱら図と英文を眺めてました。Trichontaは(39図)体が細長いので違い、330頁の6・7図(頭部背面)と” こちらは別個体の頭部 ”画像を見くらべ、Phroniaを捨てて Epicyptaを選びました。正しい判断かどうかは、羽化成虫の翅脈で判るでしょう。
返信削除「 Krivosheina key to genera fungus gnat larvae 」
Epicypta属はmokurokuに2種の記録があり、笹川さんが皇居から4新種を記載しています。新種かもね?!
以前不明だった種が似たような感じです。ハエだったとは…
返信削除http://blog.tamagaro.net/?p=5124
http://tukik.exblog.jp/20812344/
どちらも拝見した記事で今回のものとは結びつきませんでしたが、おなじですね。かわいた葉の上を移動するのは↓の記事のものに良く似ていますね。今回のとは違う属でしょうか。面白いです。
削除nationalgeographic.jp/nng/article/20140324/389337/index_sp.shtml
西田賢司さんが見つけたやつは、ご紹介したKrivosheinaのマユ(第1・2図)などからみて、Trichontaはありえず、おそらくPhronia属だと思います(円錐を潰したような形ですね)。
削除5日後のマユ:羽化成虫は、マンホールのふたを押し開けて脱出するのかも(妄想です)。
返信削除おはようございます。
削除詳細にお調べいただき、ありがとうございます。Phronia larvaまでは自力で調べましたが、そこから先が全く進めませんでした。ロシア語の文献の図説まで引っ張り出されるスキルに毎度の事ながら脱帽であります。今度は成虫の記事が載せられるよう定期的な観察ポイントに加えておきます。
「なぜ、わざわざ蓋をつくるのか?」という疑問が解決しました。ハチのように硬いアゴで壁に穴を開けられないからなんですね。押して開けるのに1票です(^^
9月10日追記:ありがとうございます。申し訳ありませんが、一部修正してください。
返信削除1:腹節のcreepin welt (勝手に櫛歯条線と呼称)でキノコバエ科。(5枚目の写真)
2-4:Epicycta >>Epicypta
3:全文削除、かわりに「体がこのように太短いのは、Phronia、Epicycta、Platurocypta,属の幼虫
4:CiNii論文、近年の笹川さんらの報告でPhronia、Epicycta、Platurocypta,属ともに日本に産する
Platurocypta,punctumという種が京都市の粘菌(の内部)から報告されていますが、幼虫の形は未記載です。Krivosheina(2010)によれば、このようなcaseを背負うのはPhronia、Epicycta属のみで、前者は短円錐型、後者は平楕円型のcaseとしています。
すみません、またしてもEpicyctaと打ってしまいました。Epicyptaです。
返信削除追加情報、ありがとうございます!修正しておきました。もうEpicyctaで決まりでいいような気がしましたので”?”を外しておきました。問題あれば、また訂正しますm(_ _)m
削除いやはや、こんな面白い虫がいるんだ!
返信削除私も驚きました\(^o^)/
こんばんは
削除驚いたのは自分だけじゃなくて良かったです(^^
別件を調べていて、ここで自分のサイトが話題に上がっていたことを知りました。
返信削除不明生物が1つ解決したのをうれしく思います。
最近活動できていませんが、久しぶりにBABAさんのサイトを見ると、
改めてすごいですね。
おはようございます。
削除すみません。種名が分かった時点で、ご報告すれば良かったですね(^^;;
他力本願ですが不明生物がわかった時の”気持ちよさ”はブログを続けていて良かったと思える瞬間です。
tukikさんも、お忙しいようですね。フィールドに出かけられないとストレス溜まります(_ _)